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夜には花が見えないように今はここから見えない人が夜の花に光をあてる

[本作品について/齋藤春佳]

ウェブでの作品鑑賞は、基本的に鑑賞者の自宅という様々な環境で行われます。また、繰り返し視聴可能であるという特徴があります。

例えば展示会場におけるインスタレーションにおいては、その時鑑賞者の目に映る物事はすべてかけがえのない一回限りのできごととして提示されます。

しかし、ウェブで鑑賞される作品は何度でも再生可能です。そして、だからこそ、繰り返すことのできない一回限りのできごとや瞬間は、画面の外、鑑賞者を取り巻く自宅の中に起こっているということを提示することができるのではないかと考えるのです。

文化芸術作品は、生活から目をそらすような没入空間を作ることではなく、日常生活を照らすものであってほしいと考えます。画面からふと眼を上げた時にある水の入ったコップの美しさ、窓からの風が揺らすカーテン、暑さ、家族の後ろ姿、そして、今目の前にない人や場所を思う自分の心の動き。場合によっては、家事や自宅勤務をしている時に、映像が流れていて、ふと、言葉や音楽が耳に入るという視聴のされ方もあるかもしれません。

また、何度も再生できるということは、記憶されるということにつながります。いつの間にか覚えているその音楽が、遠い未来、何十年後かにふと鼻歌として蘇るということを想像してみると、先の見えない不安な状況の現在が、未来における懐かしい過去としても立ち現れるのです。


ほいぽい

「夜には花が見えないように今はここから見えない人が夜の花に光をあてる」

作詞:齋藤春佳  作曲:池田諒

 

水平線にもぐってうたう

山の稜線に潜んであそぶ

閉じたまぶたをなぞっても

さわれない さわれない

あなたの見た景色はわからない

まつげと指の輪郭が

影を落とす地面の色

誰のもの どこにある

夜には花が見えないように

今はここから見えない人が

夜の花に光を当てる

hoypoy

“Just like the flowers I cannot see in the dark night, the people I cannot see from here will someday shed the lights on the night flowers”

lyrics by Haruka Saito    composed by Ryo Ikeda

 

Swimming and singing under the horizon

Playing behind the mountain ridge lines

Even if I pass my hands over your closed eyelids

I can’t touch

I’ll never see what you see with your eyes

Shapes of eyelashes and fingers

Cast shadows on the ground

Whose are they? Where are they?

Just like the flowers I can’t see in the dark night

The people I can’t see from here

Will someday shed light on the night flowers

(translated by Yukie Yoshizaki)(翻訳:吉﨑ゆきえ)

制作者 齋藤春佳(団体名:ほいぽい)
プロフィール ほいぽい:音楽家の池田諒と美術家の齋藤春佳によるユニット。

齋藤春佳:絵画やインスタレーションを制作。主な個展に「立ったまま眠る/泳ぎながら喋る」(2020年・Art Center Ongoing)、「飲めないジュースが現実ではないのだとしたら私たちはこの形でこの世界にいないだろう」(2017年・埼玉県立近代美術館)がある。

池田諒:2007年から2015年まで バンド「Slum」においてボーカルとギター、ベースを担当。ソロ活動の名義に「イケダリョウ」、「おのれでおどれ」がある。

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